『破魔弓師』プロジェクト

2024年11月07日

プラットフォーマーと全方位シューターの両立

Hamayumishi title

現在、製作活動を行っている破魔弓師というゲームでは、プラットフォーマーと全方位シューターの両立を目指しています。 この両ジャンルは、レトロゲームから現代にいたるまでの2Dゲームにおいて最もメジャーなうちの2つであり、両方を好むゲームファンも多いと思います。インディーゲームでは特に、高難易度のゲームがこれらのジャンルに多く、コアな2Dゲームファンが好む傾向にあるように思います。 その一方、この二つの組み合わせはお互いに不都合な点が多く、両方の美点を生かしたゲームはそれほど多くないように思います。今回、組み合わせることによって発生する不都合と向き合いながらそれを解決していこうと思い破魔弓師プロジェクトをスタートすることとしました。

プラットフォーマー+全方位シューターの不都合な点

プラットフォーマーは、高精度アクションとして取り扱われて素早く正確なプレイを楽しんだり、画面がスクロールするたびに敵が規律正しく現れて、それらを丁寧に処理をするアクションを求められることが多いように思います。そしてそれらには常に重力の作用を処理することがプレイヤーに要求され、ハイレベルなプレイヤーにゲームを任せるとアクロバティックな芸術性が生まれます。丁寧で正確で素早く処理を行うことがこれらのゲームの要求されるスキルであり、プレイヤーの快感につながっていくと考えます。

その一方、全方位シューターはゲーム自体にランダム性が求められるケースがあり、突発的事象への緊急対応の連続を繰り返し、わずかな隠れスポットから決死の覚悟で飛び出すようなシチュエーションも多くなります。敵キャラが意思を持っているようなアクションをすることも多く、プレイヤーには反射神経と画面全体のカオスをコントロールする技術が求められ、これらがプレイヤーの快感につながっていくと考えます。

Jump vs shooter

高精度なゲームプレイと緊急対応の連続対応は、相反する要素とは言えませんが両立させることは極めて困難です。しかし、組み合わせる以上、プレイヤーにはこの両方の快感を提供しなければなりません。

また、当然のことですがプラットフォーマーにて作用する重力は、プレイヤーの意思でキャラクタが動くのではなく予想と経験で勝手に落下するものであり、空中にいる間などキャラクタは止まってくれません。キャラクタが止まらずその動きを瞬時にとらえることが難しいため、全方位シューターのような、やや複雑なコントロールで狙った場所に狙撃することは不可能になるでしょう。

shooter in air

そもそもパズルゲームやアドベンチャーゲームにして、クリックの代わりに狙撃をしたりすれば解決するのかもしれません。また、水中のような重力が作用しづらい環境にもっていっても解決するでしょう。しかし、プラットフォーマーで得られる快感と全方位シューターで得られる快感の両方を得るためには、ある程度ハイスピードで展開するアクションゲームである必要があります。これを実現するために考察し、取捨選択をおこない、新しいアイデアの導入を行いました。

両立の実現に向けて

まずは重力作用との戦いにフォーカスしました。映画などの演出で奇跡の一撃を放つときにスローモーションで表現されるのは極めて典型的でありやりつくされた手法ではありますが、効果も抜群であり今もなお用いられています。今回のゲームはすべてがその奇跡の一発である状況にして、ショットのたびに毎回スローモーションを発生させることにしました。 ハイスピードな展開を望むプレイヤーにとって、このスローモーションが毒のように作用する可能性があり、うざったくなったりしつこさを感じるリスクがあったのですが、プレイヤーがそれらを感じるかどうかにフォーカスをしながら調整を行いました。それがミニゲームの『破魔弓師 提灯チャレンジ』としてitch.ioに公開しました。

Slowmotionshot

私の所感では、スピード感を失うことがなくスローモーションが表現できたと思います。調整した項目としては、スローではないときの速さ、スローの時の遅さを調整し速度に落差を大きくしました。移動速度としてはプラットフォーマーとしてやや早い部類に入ると思います。

ジャンプの速度もかなり早くし、近代プラットフォーマーで導入されることが多いジャンプ最大地点での瞬間的な滞空は極めて発生しづらくしました。スローがゲームメカニズムにある以上、滞空動作は完全に不要であり、敵の攻撃をよけなければならないシチュエーションでは邪魔になるためです。また、動作停止時の慣性の残留(急に止まれずちょっと滑る現象)をやや大きめにしました。ジャンプによる移動中での狙撃のほか、滑りながらの狙撃はコントロールが難しくなるように見せかける効果を出すため、操作方法として嫌われるメカニズムですがあえて強めに導入しました。

高精度な動きの要求としては、画面固定のミニゲームであったためプラットフォーマーらしいものにはなりませんでした。いくつか段差を作りプレイヤーが敵をかわすアクションを楽しんでいただこうと思ったのですが、移動範囲の都合でそれが表現され切っていません。その一方、攻撃手段を連続撃ちが困難な弓矢にすることで丁寧なショットを要求することになりました。高精度なショットで足場の敵をクリアして、精度よくそこに着地する。これを繰り返すゲームの礎になったかと思います。

カオスのコントロールという意味では、とにかく増え続ける敵を一掃する手段が乏しく貫通ショットを設けましたが、まだ伸びしろを残した形になっていたと思います。

スローモーションが、この2ジャンルの両立を支えるポイントになりえることが分かり実験を終了してもよかったのですが、このメカニズムをより形に残すには長編ゲーム化し、伸びしろを限界まで伸ばしていくことで新たな可能性の追求と問題点の抽出を行い記録に残していきたいと考え破魔弓師プロジェクトを継続し、『破魔弓師 ~逆走、百鬼夜行~』の開発に着手することにしました。